「技術経営・イノベーション大賞」は、世の中を変革するイノベーションを生み出した、
優れた“技術経営”の事例を表彰して広く世の中に紹介することで、
本表彰対象が次世代の経営者・技術者へのモデルになることを目的としています。
自薦他薦を問わず、多数の応募をお待ちしております。
組織や集団が協力しあってイノベーションを興そうとする、その努力を導きまとめあげていく技術経営上の理念・プロセス・チャレンジに特に注目しています。以下の5つのポイントについて、実績や今後の現実的な展開・展望などを評価します。
今回も表彰式や記念講演をしていただくセレモニーを企画しております。詳細が決まり次第、マイページにご登録いただいたアドレスへメールにてご案内いたします。
世界初、「布地」や「洋服」に10以上の多機能を同時に付与する、⽇本の技術である。服の未来を変えうる(様々な社会課題を解決する)ポテンシャルを持つ点、アパレル業界の⼤量廃棄問題において循環型ファッションを実現し、化学繊維を使わず天然繊維素材で快適多機能素材を実現する技術であり、アパレル関連のサーキュラーエコノミーに関するモデルケースとなり得る点が評価された。
本イノベーションは従来型アパレル(大量生産・大量消費・大量廃棄)から次世代型アパレル(カスタマイズ・パーソナライズ・サーキュラーファッション)への挑戦である。
COVEROSS®(カバロス)テクノロジーとは「素材」や「衣服(新品・古着)など」へさまざまな機能性をカスタマイズ付与・除去できる後加工技術である。COVEROSS®WIZZARDは光触媒などを応用し、1工程で10個以上の多機能性(セルフクリーニング、抗菌、抗ウィルス、消臭、UVカット、遮熱、冷感、吸水拡散(べたつき軽減)、透け防止、汗じみ軽減、帯電防止、毛玉防止など)を1枚の生地に同時に付与可能である。化学繊維や天然繊維素材を問わず、通気性や風合いを維持し耐洗濯性も高い。使用後衣服の繊維リサイクル時に必要な「機能剤除去」も可能である。また、小ロット・短サイクル・小スペース対応可能な「機能付与ランドリー(製造工程時の水やエネルギー使用量を大幅に削減)(特許出願)」やスプレータイプも開発。衣服の部分的(例えば、首や肩、脇下を冷やし、腹部は温める)に機能性をカスタマイズ付与することで汗による気化熱冷感による快適熱中症対策衣服を開発した。
モバイル空間統計®を利用した人口統計情報は様々な活用方法があり、本事業は精度が高くリアルタイムな人口推計技術である点、他社に比べバイアスが少なくデータに偏りがなく、サンプル数が圧倒的に多い点、イノベーションのベースとなる情報プラットフォームとして有用である点、技術の組合せが非常に優れており、新たなサービスを生み出している点、海外からのローミングインデータの活用による訪日外国人の人口統計情報を提供している点が評価された。
モバイル空間統計®は、国内居住者約8,500万台(2022年3月時点)、訪日外国人約1,200万台(2019年の実績値)の膨大なサンプルから推計する人口統計情報である。性別、年代、国・地域等から分析でき、エリアの特徴(人口分布)や人々の動きを、時間帯ごとに継続して把握できるのが特長である。2013年10月に商用化し、帰宅困難者対策等の防災計画や、地域活性化、商圏分析等に広く活用されている。
また、プライバシー保護と統計精度の確保とをリアルタイムで行う技術を確立し、2020年1月より約1時間前の人口分布を500mメッシュ・10分単位で提供する国内初のサービスを開始した。厚生労働省等と連携して新型コロナ感染症拡大防止に資するデータを提供し、感染症対策サイトにて人流データや1時間前の人口分布等が閲覧できる人口マップを公開している。
さらに、本統計と各業界データを統合するAI予測モデルにより、様々なAIソリューションを創出した。世界で初めて実用的な精度で数時間先の渋滞の予測に成功した「AI渋滞予知」をはじめ、マーケティング・交通需要予測、災害対応・環境改善等にて成果を収め、社会的にも高い評価を受けている。
大変名誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。私どもは、端末の情報をもとに人口統計を推計する「モバイル空間統計」を2013年より開始し、2020年にはリアルタイムに推計するサービスとして提供開始しました。コロナ禍では、正確な人流情報により感染拡大の防止に貢献したものと自負しております。また、AIと組み合わせて交通渋滞、環境問題や地域活性化にもアプローチしております。受賞をきっかけにより多くの皆様にモバイル空間統計の可能性を感じていただけるようになりました。事業開始から約10年間の歩みを総務大臣賞という形で評価いただいたこと。これは信頼ある技術の証として、今後の事業発展を後押ししてくれる糧になっています。社会や産業のさらなる発展をめざし、今後も一層イノベーション創出と事業推進に努めます。
数ある機能性乳酸菌の中で、pDCを活性化する乳酸菌を世界で初めて発見し、プラズマ乳酸菌と名付けた。菌の作用メカニズムの解明・臨床試験によるエビデンスの整理をすることで、国内で始めて”免疫”機能性表示を達成した。健康に係る社会的要求に合致しており、今後の事業展開に期待される点、新市場の創出と、新たな顧客層の開拓を行い中核事業に育てた点が評価された。
医療・健康において、ウイルス感染防御は中心的な課題である。本イノベーションでは、従来の対ウイルス医薬品の抗原依存性の弱点を補う新しいアプローチとして、ヒトの自然免疫機能を亢進させる方法を発明した。すなわち、ヒトのウイルス感染防御の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を乳酸菌という食素材で人工的に活性化させることで、ウイルス罹患時に高い防御能を付与するものである。本アプローチにより、2010年にpDCを活性化する世界初の乳酸菌としてプラズマ乳酸菌を発見した。
その後、作用メカニズムの解明と数々の臨床研究を通じてそれらを一連のエビデンスとしてまとめることで、2020年に長年、日本の食品業界の悲願であった”免疫”機能性表示を達成した。免疫機能での機能性表示食品の届出受理により、新たなヘルスクレームの門戸を開き、大きなポテンシャルを持つ免疫市場を創出した。また、プラズマ乳酸菌は死菌粉末の少量摂取で効果を発揮するため、常温流通可能であり、国内外へ幅広い商品形態で事業展開を行っている。研究の点では、国内外の公的研究機関と新型コロナウイルス等の感染症臨床研究が進展中であり、さらなる社会貢献を目指している。
「味覚」という主観しかなかった感覚を、客観的にとらえる機器として実用化した。新しい商品・サービスに繋がるかもしれないといった期待がされる点、世界初かつ唯一、味覚のDXを可能とする製品を創出した点、味覚センサ 国内業界シェア・国内売上、共にNo.1の実績がある点、また、九州大学発ベンチャーである点が評価された。
本イノベーションでは世界で初めて「味を測る」という概念を提案し、味を測る装置の開発を行い、舌の細胞の生体膜に相当する人工の膜を、脂質と高分子から作り上げることで、味の計測を可能とした。この独創的な基礎研究に基づく味を測る電子デバイス、つまり味覚センサは、主観しか存在しなかった味覚の世界に客観的な計測手段を初めて持ち込んだ。
九州大学の基礎研究を受けて味覚センサを実用化したのが、アンリツ(株)との共同研究である。味覚センサは、九州大学発ベンチャーである(株)インテリジェントセンサーテクノロジーによって製品化され、さらなる改良と開発が加えられ、現在国内外600を超える食品メーカー、医薬品メーカー、公的研究所や大学で使われ、味に係る多様なニーズ、例えばコンビニエンスストアやスーパーにおける地域ごとのプライベート商品開発、食品製造ラインでの品質管理、医薬品の味の改善(苦味の低減)、個人嗜好マーケティング対応など様々な分野に活用されている。「味の物差し」は、音楽の楽譜に相当する食譜(食の譜面)を産み出し、おふくろの味、秘伝の味、伝統の味をはじめとした食文化を後世に伝えることを可能とする。
日本のCO2排出量の3%を占めるセメントにおいてCO2削減に貢献できる点、20社を超えて協業するなど、社内外に新たな組織・マネジメントを生み出し、建設業界挙げて社会的課題に取り組んでいる点、既存の設備で製造でき、技術規格も整え、コストも見合うという点、材料を使用するだけでCO2削減に貢献できるという点が評価された。
地球上で最も使われる人工材料であるコンクリートのCO2排出量を大幅に削減する技術を開発し、社会実装を開始した。従来と同様に製造・施工できるため、蓄積した技術や経験・設備を活かして円滑に入れ替えができ、脱炭素社会構築への貢献が期待できる。
T-eConcrete®/セメント・ゼロ型はCO2排出量の多いセメントを使用せず、製鉄副産物の高炉スラグで代替し、コンクリートのCO2を70~80%削減する。2013年から実装を始めて技術指針や製品化技術を整え、2019年から製品種類や適用法を拡大して実装を加速し、CO2削減を続けている。
T-eConcrete®/Carbon-Recycleはセメント・ゼロ型にCO2を資源とする「カーボンリサイクル材料」を加えてCO2排出量を118~149%削減し、原単位が-116~-45kg/m3の「カーボンネガティブ」を達成した。従来のCO2吸収コンクリートで困難な生コンによる施工(現場打ち)と鉄筋コンクリート構造への適用を実現し、2021年から実装を始めた。鍵となるカーボンリサイクル材料の製造とサプライチェーンの構築に取り組み、本格展開に目途をつけた。
生きた乳酸菌を関与成分として「ストレス緩和、睡眠の質向上」の機能を有する初の機能性表示食品である。宅配向け、店頭向けに形状を変えて製品を販売した点、寝具メーカーとのコラボ企画やサンプリングイベントなどを実施している点、入手困難となるほど大ヒットした実績がありビジネス的に成功している点、ストレス軽減や睡眠の質向上という社会的欲求に合致している点、脳腸軸に係る効果をエビデンスとともに示している点が評価された。
近年の腸内細菌研究では、脳と腸の相互作用である「脳腸相関」に腸内細菌が深く関与することが明らかとなり、新たな恒常性維持システムとして「腸内細菌-腸-脳軸」が注目されている。
独自のプロバイオティクスである乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT9029)の腸内環境改善作用に着目し、脳腸軸を介する機能に関する研究を進めてきた。また、これと並行して、菌の増殖および安定性のために使用原料や培養技術などの改良により、発酵乳飲料に含まれる乳酸菌 シロタ株の菌数および菌密度をこれまでよりもさらに向上させることに成功した(10億個/1ml以上)。
そこで、高菌数、高密度化した乳酸菌 シロタ株含有発酵飲料を用い、学術試験受験による心理的ストレスを感じている健常な医学部生を対象とした飲用試験で脳腸軸を介する効果を検証した結果、ストレスを軽減し、さらに睡眠の質を向上させることにより学術試験のストレスに伴う睡眠状態の悪化を軽減することを見出した。
これらの高菌数、高密度化した乳酸菌 シロタ株含有発酵乳飲料を用いた脳腸軸に関する研究を通じ、同飲料の機能性表示食品としての商品化を進め、研究の実用化につなげた。
発展途上国でも普及しているスマホを使用した医療機器開発し、3Dプリンタを用いた大きな投資を必要としない生産ライン確立した。重要な課題にチャレンジしており、社会的貢献が世界的に期待される点や、他分野のメンバ混成による価値創出であり、医師との連携を含めた関係を構築しプラットフォームを形成しつつある点が評価された。
創業者の眼科医がベトナム農村部に赴いた際、従来の眼科医療機器が存在せず、開発途上国では満足な眼科医療が受けられないことで、治療可能な眼疾患により失明患者が増加している社会課題を発見。現地スタッフはスマートフォン(スマホ)光源を使って何とか眼科診察を実施。この光は眼科医が必要な光として不十分、ここからスマホ光源を応用した医療機器を作ることで、世界の失明を解決可能という仮説が生まれた。
帰国後、3Dプリンタを使用して開発を行い、自分達の眼で実験を行い、眼科医目線で十分な性能まで改良、眼科疾患が診断可能なスマホアタッチメント型医療機器Smart Eye Camera (SEC)を開発。
撮影画像を使って遠隔診断を可能にするソフトも実装、日本及び海外での医療機器化、日本と東南アジア・アフリカ・南米を中心に世界20か国以上で展開。SEC画像を機械学習にかけ、世界初の前眼部疾患の診断AI開発実施。課題の根幹は世界の医療機器と医師不足であり、SECの普及で、医療機器不足を解決。診断AIにより医師不足を解決し、世界4330万人の失明と22億人の視覚障害者から生まれる約720兆円の経済的損失の克服を目指す。
hinotori™ サージカルロボットシステムは、国産手術支援ロボットである。日本市場に合わせコンパクトさを追求し、価格も抑えた点、開発から上市までのリードタイムが短い点、医療従事者の職人技をデータとして吸い上げるなど事業拡張性の余地がある点、医師の人材不足やへき地医療への貢献など社会課題解決の一つとして期待される点が評価された。
hinotori™ サージカルロボットシステムは、腹腔鏡下手術を支援するロボットシステムである。hinotori™ サージカルロボットシステムは、図のとおり、オペレーションユニット、サージョンコックピット、ビジョンユニットの3ユニットで構成される。手術を実施するオペレーションユニットのアームは、ヒトの腕に近いコンパクトな設計で、アーム同士やアームと助手の医師との干渉を低減し、より円滑な手術の実現をサポートする。サージョンコックピットは、執刀医一人一人の体格や姿勢に合わせるため、人間工学的な手法で設計されている。手術は長時間にわたることもあり、執刀医に負担がかかることが課題であった。このサージョンコックピットは執刀医の負担を軽減し、ストレスフリーな手術をサポートする。ビジョンユニットは精緻な手術を実施いただくために、サージョンコックピットに高精細な内視鏡画像を3Dで映し出す。
さらに手術中の情報共有のため各ユニットに設置されたマイクやスピーカーの音声のコントロールを行い、執刀医と助手の医師とのコミュニケーションをサポートするなど、チームとして効率よく手術を実施するための工夫が施されている。
地域防災力の向上や脱炭素化の実現など、都市課題の解決への貢献に期待できる点、イノベーションのベースとなる情報プラットフォームとして有用である点、官の保有するデータの民間活用を促進するためのプラットフォームを整備した点、都市モデルのオープンデータ化、オープンイノベーションの好事例である点、デジタルツインを都市そのものに適用するという新しい発想が評価された。
「Project PLATEAU(プラトー)」は、スマートシティをはじめとしたまちづくりDXのデジタル・インフラである3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を推進する国土交通省のプロジェクトであり、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の高度な融合(Society5.0/デジタルツイン)の実現を目指している。3D都市モデルは、建築物、道路、土木構造物等の現実の都市に存在する様々なオブジェクトの“三次元形状”と“意味情報”をパッケージとして記述した地理空間データ。現在約60都市、約10、000㎢と世界的にも前例のない規模で3D都市モデルを整備・オープンデータ化している。(※2022年度末には100都市以上となる見込み)
さらに、防災、環境・エネルギー、まちづくり・都市計画、モビリティ、XRなど多様な分野で3D都市モデルを活用したユースケースを開発。国土交通省自らが民間企業や大学と連携して様々な分野で3D都市モデルの有用性を検証するプロジェクトを立ち上げ、ベストプラクティスを生み出し、その成果を公表。官民の3D都市モデルの活用拡大を促し、イノベーションの創出を図っている。
03-3263-5501 (平日 10:00~17:00)
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イノベーションとサステナビリティへの取り組みを高く評価頂いたことで、業界内外でのブランド価値と信頼性が向上しました。「サーキュラーファッション」という持続可能なビジネスモデルを推進することで、環境責任を果たし、社会的影響力を強化しました。このような栄誉は、業界内外の関心を引き、新しいビジネスモデルを加速化し、従業員の士気向上や才能ある人材の魅力を高めました。さらに、この受賞によりカバロス製品・サービスの消費者市場(BtoC事業)へのビジネスモデルの拡大にも大きく貢献し、持続可能なファッション業界の新たな潮流を生み出すことにつながっております。hap 鈴木素CEO